Improve your business

クリステンセン教授の【新刊】「繁栄のパラドクス」を要約してご紹介。無消費に着目した市場創造型イノベーションとは?

Sponsored links

2019年6月21日、クレイトン・M・クリステンセン氏が待望の新著「繁栄のパラドクス ―絶望を希望に変えるイノベーションの経済学-」を発刊しました。「イノベーションのジレンマ」「イノベーションへの解」「ジョブ理論」を読んで楽しみにしていた方も多いことでしょう。

今回はマーケターや新規事業者の方などのビジネスパーソンに向けて、本著を要約して紹介します。「読みたいが時間がない」「内容をさらってから読みたい」などのジョブをお持ちの方はぜひごらんください。

 

 

目次

本書のテーマ

本書はクリステンセン氏自身が宣教師として赴任した1970年代当時の韓国についての紹介からスタートします。当時の韓国は今では想像できないほどの最貧国で「食事をするか、学校に行くか、病気を治すか」の選択を迫られるほどでした。しかしそれから約50年たった今、韓国は飛躍的な成長を見せ、今では貧困国に経済的援助を“する”側になっています。

しかし同じ50年でもアフリカやサハラ以南の国々はいまだ貧困のままです。もちろん、それらの国々もこれまでにさまざまな取り組みによって、貧困を抜け出そうとしています。しかし長期的に反映できていないのは確か。むしろ援助によって経済状況が悪くなっていケースもあります。「どうしてこれらの国々は繁栄できないのだろう」。序盤クリステンセンは疑問を投げかけています。

 

本著では持続的な繁栄のつくり方の理解を通して、貧困という複雑な問題に対する新しい視点を提供したい。(中略)経済発展にまつわる問題のとらえ方や正しい問い、苦しい状況に置かれた地域のための解決策が変わることを願っている。

この言葉が本書の大きなテーマになるでしょう。キーワードとしては「無消費」があります。市場においてまだ消費されていない部分、また消費したいができていない顧客のジョブに着目することで、イノベーションを起こすことができます。最貧国には特にまだ消費されていない分野が多い。無消費に注目することで自社の繁栄はもちろん、新たなインフラや制度などまでが発展し、最貧国を救うことにつながるのです。では内容を理解するために、読み進めていきましょう。

 

 

「繁栄のパラドクス」とは

まず第一章ではアフリカでの2つ事業を紹介しています。本著の共著者であるエフォサ・オジョモ氏とセルテル社の創業者であるモ・イブラヒム氏の取り組みです。そこで「繁栄のパラドクス」の意味について記載があります。

エフォサ氏はアフリカの子どもたちが貧困にあえいでいる現状を知ってNPOの「ポバティ・ストップ・ヒア」を設立しました。まず着手したのは井戸の設置です。アフリカでは生きるために必要な水の供給がうまくいっていませんでした。しかし結果は失敗に終わります。5つの村に井戸を設置するも、故障してしまい、辺鄙な場所だったため修理もできなかったのです。実は同じように故障した井戸はアフリカ圏内で5万以上もあることを知り、エフォサは落胆し給水事業をストップしました。

モ・イブラヒム氏は同じアフリカ圏内をベースに携帯電話会社・セルテル社を設立しました。周囲に事業計画を伝えると「アフリカでビジネスができるはずない」と嘲笑されたそうです。当時のアフリカは有線電話のインフラや携帯電話の基地局すらない状態。携帯電話は高価すぎてアフリカの方にはとても買えなかったし、そもそもニーズすらなかったのです。

しかしイブラヒム氏は「貧困」ではなく「機会」や「不便さ」に注目。「歩いて7日かかる母親とすぐに話せたらどれだけ便利か」という意識をもって事業を推進します。無消費のなかに市場を創造するチャンスを見つけたのです。そこでインフラや仕組みを整備、当然莫大なコストはかかりましたが、低所得層にも手が届く安価な携帯電話をリリースするとわずか6年で520万人もの利用者を集めました。それだけではありません。セルテル社の成功を見て、現在では主要な携帯電話会社が次々と市場に入り、雇用が促進され、2020年にはアフリカ経済に2,140億ドルの貢献が見込まれています。

クリステンセン氏はエフォサ氏の失敗を取り上げて「一見すばらしそうな試みにどれほど投資したとしても、何が持続可能な経済成長をもたらすのかを理解しないかぎり、現実には成長の歩みは遅い」と書いています。これが「繁栄のパラドクス」です。目の前の問題にだけ“プッシュ”して投資するのではいけない。まだ生まれていない市場に創造的イノベーションを起こして“プル”することで、雇用が促進され、チャネルができ、販売につながり、文化が広まり、国全体にまで長期的な成長(=繁栄)を見込めるのです。

またクリステンセン氏は「世界各国の経済の進歩をみたときに、イノベーション、特に市場創造型のイノベーションが長期的な成長と繁栄に大きく効果を及ぼしていることがわかった」ともいいます。セルテル社の取り組みがまさしく「無消費に市場を生み出した」市場創造型のイノベーションです。市場創造型のイノベーションにはさまざまな効果があります。では市場創造型イノベーションのメリットをご紹介しましょう。

 

 

イノベーションの種類

本書では3種類のイノベーションが紹介されています。

 

1. 持続型イノベーション

既に市場にあるプロダクトやサービスを改良することであり、既存客により高い価値を提供する方法です。例として挙がったのは紅茶メーカーのリプトン。さまざまなフレーバーを立て続けにリリースすることで少なくとも既存客を囲い込んでいます。出来上がった市場に対してのアプローチになるので、顧客の取り合いになります。

 

2. 効率化イノベーション

商材や顧客セグメントを含めた既存のビジネスモデルを変えないままで、リソースやコストを減らすことで起こすイノベーションです。例えばアメリカの石油・ガス業界では過去30年間で雇用者は3分の2に減りましたが、テクノロジーの進化、導入による効率化で生産量は700万バレル増えています。

 

3. 市場創造型のイノベーション(破壊的イノベーション)

本書のテーマです。それまでプロダクトやサービスやなかった市場に商材をローンチする。もしくは複雑で高価な商材ばかりで買えなかった市場に安価でシンプルな商材をリリースすることを指します。最も影響力があり、市場だけでなく雇用、製造、販路、流通などにも影響を与えることになります。

 

 

市場創造型イノベーションの起こし方

ではどのようにして市場創造型のイノベーションを起こせばいいのでしょうか。クリステンセンは次の5点をそのカギに挙げています。

 

1. 無消費をターゲットにしたビジネスモデル

本書のテーマである「無消費」に着目したビジネスモデルを作成することが重要。

 

2. 実現するためのテクノロジー

他社よりも競争優位性を保つために、従来よりも低いコストで高いパフォーマンスを発揮するテクノロジーを導入。

 

3. 新しいバリューネットワーク

無消費に向けてバリューネットワークを見直し、既存のコスト構造を変更することが大切。

 

4. 緊急戦略

無消費を相手にすると顧客のリアクションを予想できないので、柔軟にビジネスモデルを見直すことが必要になる。

 

5. 経営陣によるサポート

新市場に乗り出す際は成功可能性のエビデンスが取れないので、高評価をもらえにくい。だからこそCEOなどの経営陣のサポートが必要になる。

これらの方法によって、市場創造型イノベーションを起こす下地が整います。しかしそもそも無消費の市場を見つけないことには市場を創造することはできません。次の章でその方法について解説がありますので、紹介しましょう。

 

 

無消費を見つけ出す方法

第三章では無消費を見つけ出す方法を紹介しています。クリステンセンは「経済予測の多くが役に立たない」といいます。その理由は一般的に可視化しやすい消費経済の一部を切り取って予測するものだからです。大切なのは見方を変えることだといいます。

その例としてザンビアを拠点に保険事業を立ち上げたリチャード・レフトリーが挙がっています。彼は勤めていた保険会社で既存の顧客データに疑問を抱きました。世界の顧客のなかでも、特にバングラデシュやパキスタンは自然災害での犠牲者が多かったのですが、支払額自体は少なかったのです。そこで彼は近隣のザンビアにわたり、HIVが猛威をふるっていることを知り、アフリカでHIVの保険を販売するために「マイクロエンシュア社」を設立。これまでに新興国で5,600万人以上の加盟者がいます。

ではマイクロエンシュア社のように、顧客などいないように見える市場に乗り出すためにはどうすればいいのでしょうか。そのためにクリステンセンは無消費を見つけるための「レンズ」が重要だと説いています。そして「レンズ」を得るためには、消費者がもつ次の4つの「バリア(障壁)」をもとに考えることが重要です。

 

1. スキル

顧客のジョブの解決策が市場に存在してもスキルがないために、利用しされないケース。例えばコンピューターははじめ、使うのに特別なスキルが求められており、一部の層にしか消費されていませんでした。

 

2. 資産

購入する資産がないために、サービスやプロダクトを利用できない例もあります。セルテル社が安価な携帯を発売していたように、資産の障壁をなくすことで無消費に市場を見出せます。

 

3. アクセス

解決策を用いるために、無消費者のいる場所からはアクセスできない(しにくい)場合も多々あります。クリステンセンはそれまで移動しなければ使えなかったコピー機が小規模な事務所に導入された例を挙げています。

 

4. 時間

時間の制限があって(従来の方法では時間がかかりすぎて)、解決策を利用できないこともあります。クリステンセンが例示しているのはメキシコでの糖尿病治療クリニック・クリニカス・デス・アスカルです。これまで数カ所のクリニックに通っていた手間を省いて一カ所で治療を完結できるような仕組みを整えました。

 

 

ジョブ理論で現実の苦痛を解読

不便・苦痛から無消費を探すレンズをもち、片付けるべきジョブを解決するソリューションを創造する。

クリステンセンはこの他にも前著「ジョブ理論」を用い、無消費市場での片付けるべきジョブから解決策を見出すことが重要であると説いています。

解決したいのにハイアすべき商材がないから、人は無消費になる。人は満足いかない方法でジョブを解決するよりは無消費でいることを選ぶものです。その無消費の市場を見出すためには現状のデータをただ眺めるだけでなく、未来の顧客の目線に立つべきだといいます。

しかし気に入ってはいないものの、しぶしぶ用いている商材がある場合、変化を促すのは簡単ではないといいます。人は基本的に古くからなじんだものを好む傾向にあります。その理由をノーベル経済賞受賞者のダニエル・カーネマンは「頭を使う必要がなく解決策として一定の効果があることを直感的に分かっているから」と説いたそうです。

こうした人の意識を変えるために、ジョブ理論は効果を発揮します。その例としてクリステンセン氏は先述したマイクロエンシュア社を持ち出しました。マイクロエンシュア社は、はじめ大々的に広告を打つことで保険の加入者を募っていました。しかし1年以上続けても想像していた効果が出なかった。そこで創業者のリチャード・レフトリーは「何を売るではなく、どうやって売るかについて考えることが大事だ」と気づいたそうです。

マイクロエンシュア社はそれまで、顧客のジョブに着目していなかったということです。「朝目覚めて保険を買う人はいない。重大な危険があることに気づいた際に購入を考えるのだ」とジョブに気づいてからは保険のパッケージを刷新して、顧客の行動を観察・追跡し始めました。その結果、プロフィール情報などを打つことなく電話番号だけで手軽に契約できる保険プランをスタートし、成功につながったとあります。

 

 

プルとプッシュの違いについて

「何」と「どうやって」の違いを、第四章では「プッシュ」と「プル」と名付けて、説明しています。そのビジネス戦略の違いについて「インドのトイレ事情」と「ナイジェリアのインスタントヌードルブーム」の違いを例に挙げています。

インドにはトイレが少なく、衛生面を阻害することで多くの方が病気にかかったり亡くなったりしていました。そこで政府主導で各地にトイレを設置し啓発や説得、報奨金の支払いなどで習慣を根付かせようとしましたが、使われず、むしろ衛生状況が悪化しました。この啓発や説得、報奨金などが「変化を強要するプッシュ戦略」です。プッシュの場合はなかなか成果が定着せず、一時的な効果しか生みません。たとえ報奨金を支払っている間は利用してもらえても、制度が変わるとすぐに元に戻ってしまうのです。

一方、もともと貧困が進んでおり実に国民の78%が1日2ドル以下で暮らしていたナイジェリア。投資金額が低そうだと思われていた市場にトララム社は、手軽に調理でき栄養価も高いインスタントヌードルを持ち込みました。また満足な教育インフラが発達していないのを見て教育事業にも着手。教育電気技師や機械技師、財務担当者などのビジネススキルを教育することで、ナイジェリアのニーズを「プル(引き入れる)」したのです。その結果、人材が育つ、職に就く、(職を失いたくないので)犯罪率が下がる、国全体の経済効果につながるというサイクルが生まれました。プルは自社のサービスを強要するのではなく、顧客の現状を把握したうえでジョブに合致するサービスやプロダクトを整えることを指します。

クリステンセンは「プル戦略が繁栄をもたらす理由」について3点のメリットを挙げています。1つは「消費者の苦痛や不便、ニーズを知る現場のイノベーターが舵を切る場合が多いこと」。2つ目は「主張(強要)ではなく現状の把握や現場の調査をもとにすること」、3つ目は「まず市場の創造に注力して、その後持続的なイノベーションを考えること」です。プル戦略の原点は「売り上げを挙げること」でも「ビジネスを成功させること」でもありません。そこにあるのは強い熱意であり、現状で解決されていないジョブの解決策を生み出すことだといいます。

 

 

イノベーションに成功した企業の実例

本書の2部では市場創造型イノベーションに成功した企業の実例が国ごとに列挙されています。ここでは触れる程度にご紹介しましょう。

 

1. アメリカ「I・M・シンガー協会」

イノベーターとしてアイザック・シンガーが紹介されています。彼は手縫いが主流だった時代に安価でシンプルなミシンを開発しました。しかし当時のアメリカはシャツすら変えないほどの貧困国。周囲の声は「そんな高価なもの誰が買う」という辛辣なものでした。そこで彼は今では当たり前になったイノベーションを発揮します。支店の設置月賦払い戸別訪問使用法の直接指導などを発明。ミシンの利用が一般化したことで、衣料業界全体に大きな変化をもたらしました。

 

2. 日本「トヨタ」

トヨタも市場の無消費を的確にとらえることで躍進した企業の1つです。アメリカではフォードやGMなどが台頭していましたが、日本ではまだ牛車や荷馬車が走っていました。また戦後に入っても舗装された道路は全体の5分の1。こうした状況でトヨタは「荒れた道路に耐えられる実用的で効率的な車を作る」という考えのもと、自動車を開発します。アメリカのレベルには追い付けないので、無消費の東アジアに進出し成功を収めました。またアメリカ進出後には「使い勝手がいい小型車がほしい」という見逃されていたジョブに着目し「カローラ」を開発。フォードやGMなどと激突することなく販売台数世界一の称号を手に入れました。

 

3. 韓国「サムスン」

創業当時、野菜や小麦粉などの販売業者だったサムスンは、創業から45年後に電機メーカーに事業領域を拡大しました。当時から安価な価格帯で家電を販売していましたが、あまりの低品質さに全製品を改良。1994年には世界で初めて256MBのDRAWチップを開発その4年後には世界で初めてデジタルテレビの大量生産に成功しました。クリステンセンは「イノベーションは伝染する」といいます。その通り、韓国ではヒュンダイ、LG、ボスコなどの企業がイノベーターとして台頭し、韓国国内全体を発展させました。

そしてメキシコですが、クリステンセンは先述した糖尿病治療クリニック「クリニカス・デス・アスカル」の例を持ち出しています。しかしメキシコは「ビジネスのしやすさ」という面では上位にランクインするものの、繁栄ができていないのが特徴だと指摘しました。その理由として「市場創出型のイノベーションをする企業が少なく、効率型イノベーションが多い」ことに着目。効率型イノベーションも必要だが、狙いが消費社会なのでコモディティ化しやすいなどの問題があるのです。しかし「クリニカス・デス・アスカル」のほかにも市場創造型イノベーションに取り組んでいる企業があるのは確か。これから躍進する可能性は実際にあるとも書いています。

 

 

国の制度は市場創出型イノベーションによって決める

第3部はサービスやプロダクトを取り巻く外部環境についての話になっています。まずはじめにクリステンセンはチェコスロバキアが憲法を制定する際に西側世界の学者や法律家、裁判官などが終結して協議し、新憲法が制定されたのにも関わらず汚職が蔓延していることに触れました。

一般的にまず制度を作ってから、市場を整備するのが常になっています。しかしチェコはまだ発展途上であり、社会に無消費が多い。こうした場合はインフラや制度で欠如しがちです。今回、有識者を集めて作られた憲法は制度は他国のものをプッシュ(押し付け)しただけであり、透明化しておらず効率的でもありません。その結果、国は汚職にまみれ腐敗していく運命にあるのです。クリステンセンはここで、そもそもの順序を疑っています。先に制度を構築するのではなく、まず市場創造型のイノベーションによってサービスが生まれ、そこにインフラが追い付き、制度や文化が生まれるのが正しい流れなのです。

また同時にジョブ理論を用いて、なぜ世界中から汚職がなくならないのかを解説しています。その理由は主に3つです。

 

1. 相対的な成長欲求

人々の多くは成長したいと考えているが、場合によっては社会が合法的には成長できない環境を提示する場合がある。その際に人は相対的に成長するため汚職に手を染めます。

 

2. コスト構造の安定化

企業も個人もコスト構造を持っており、特定のライフスタイルを維持するために使う金額が定まっています。だからこそ腐敗の防止策をつくる際はコスト構造を見極めなければいけません。

 

3. 法を自分の都合のいいように解釈する

人は基本的に法を自分の都合の良いように解釈します。多くの車が警察が見ていないときはスピードを上げるように、法を破ったときの不利益と守ったときの利益を天秤にかけて判断するのです。

ではこのような腐敗はどうしたら防げるのでしょうか。クリステンセン氏は違法ダウンロードの音楽がサブスクリプションに取って代わったことを引き合いに出して「叩くのではなく戦うな」と説きます。違法ダウンロードをその都度取り締まっていても終わりがない。プッシュではなくプルが大事です。汚職をするユーザーのジョブは何かを見極めたうえで、代替策を提案することで腐敗を防げるといいます。サブスクリプションは金額、時間ともにユーザーに利益をもたらしたことで、違法ダウンロードに代わることができました。

 

 

イノベーションを先行したうえでインフラ整備を

イノベーションはインフラに先行する

クリステンセン氏は制度と同様にインフラも市場創造型のイノベーションが先行してつくられるべきだと書いています。その失敗例として挙がるのがケープタウンの高架道路です。途中で計画が頓挫し、途中で切れたまま誰も使えない負の遺産として残っています。イノベーションよりも先にインフラを整備してしまったがための失敗です。もちろん教育や光熱などのインフラも同様にイノベーションが先にあります。

もちろんインフラの整備は資金がかかるものですが、市場創造型のイノベーションは機会が大きいのできちんと説明すれば資本を受けられることも記載しています。プロジェクトと市場創造型のイノベーションを結びつけることで費用面でもメリットがあるのです。さらにインフラを整備しておけば、あとでコスト削減、利益の創造にもつながります。

先述したエフォサ・オジョモの井戸の例でも分かる通り、価値を創出しないうちにインフラを整備するのは方程式として間違っています。先にイノベーティブな価値を創出し、予測に基づいてつくることで持続可能なインフラ構築ができるのです。

 

 

発展や繁栄へのとらえ方を変えるイノベーションの原則

最終章でクリステンセンは「発展や繁栄へのとらえ方を変えうるイノベーションの原則」を5点挙げています。これまでの内容のおさらいも含めて、順にご紹介しましょう。

 

1. どの国にもすばらしい成長の可能性がある

無消費には機会が隠れています。かつては車も銀行も富裕層のためのものでしたが、現在は幅広い層に浸透しているのです。そう考えれば今でも掘り起こされていない「チャンス」がたくさんあります。無消費を見つけるレンズを付けるコトで見えてくるでしょう。

 

2. すでに市場にあるプロダクトを入手しやすくすることで新しい成長市場を創造できる可能性がある

「効果過ぎて手が出ない」「時間や場所に制限があって使えない」といったサービスやプロダクトを手軽にすることで成長につなげられる可能性があります。クリステンセンは「電気自動車」の市場の可能性を例示しています。

 

3. 市場創造型イノベーションは単なるサービスやプロダクトではない

市場創造型イノベーションを起こすことで新たなインフラや雇用、システム制度、文化なども発展します。単なるサービスではなく場合によっては最貧国に大きな影響を及ぼし、貧困から救う足がかりになることもあるのです。

 

4. プッシュではなくプルを重視する

プッシュ(押しつけ)は一時的には問題を解決するかもしれません。しかし長期的な繁栄にはつながらないのです。市場を創造して必要な資源をプル(引き入れる)することで、繁栄につながりやすくなります

 

5. 無消費をターゲットにすると規模の拡大には費用が掛からない

すでに他社が入り込んでいる消費経済のなかで規模を拡大しようとすると費用が掛かってしまうが、まったく新しい市場を創造することで文化や制度までを変えてしまうことにもつながるので、多額の費用を用いなくても自然と消費者はハイアしてくれるようになります。

 

 

部外者を置いたほうがイノベーションが起きやすい!?

ここまでが本編の要約です。ここからは巻末付記と日本語版解説の内容を要約してご紹介します。クリステンセンはイノベーションを起こすために部外者の存在が大きいと語っています。

もともとはトラックの運転手でありながら、積み荷の「コンテナ輸送」の手法を考え莫大な財を築いたマルコム・マクリーンを例に出して説明しています。業界内にいると、単純な不具合について「常識だ」と考えてしまい疑問を抱くことがなくなるのです。その点、非専門家は慣習を打破することができます。

 

 

「ジョブ理論」を一緒に読むことで理解が深まる

今回はクリステンセン氏の新著「繁栄のパラドクス-絶望を近傍に変えるイノベーションの経済学-」の内容を要約しました。日本語版の解説で津田真吾氏がいうように本作での「プル戦略」は前作「ジョブ理論」での「ジョブ」と同じような意味を持ちます。

本作では終始にわたって「長期的な繁栄のためには押し付けてはいけない、顧客が何を欲しているかを分かったうえでプル(引き入れる)することが大切だ」と書かれています。クリステンセン氏は巻末のインタビューで「プルするためのマインドセットで何が大事ですか?」という問いに「まずは質問することが大事。人が何を欲しているのかを想定するのではなく、観察する」と答えているように、開発者が頭のなかで創造するのではなく、現場のイノベーターが顧客のジョブを把握することが、無消費のイノベーションを長期的な繁栄につなげるカギになります。本作は「ジョブ理論」と通ずる部分も多い内容ですので、読んでいない方は一読してみるのもいいでしょう。

Bizmapには顧客にインタビューしたのちにジョブを整理し、ハイアされる商材をつくるのに役立つ「ジョブマップ」をご用意しています。無料でどなたでも使えますので、ぜひお気軽にご利用ください。

 


【無料セミナー】Bizmap × 識学

 

 

Sponsored links
SNSでフォローする